訳者:在日のフェミニストのボランティア

中国語の原文(全文)こちら;英訳(部分)こちら

現場の写真

東京大学阿古智子教授からの回答

概要:在日のフェミニストの私たちが、明治大学での滕彪氏の講演に対する公開質問状を発表しました。私たちは阿古智子教授からの回答と、冯媛さんからのコメント投稿を受け取りました。ここで一括して発表し、皆さんに読んで議論に参加していただきたいと思います。この件にご関心がございましたら、女権学論または私たちのメールにご投稿ください。投稿受付:deonb6342@gmail.com

阿古智子:大学院総合文化研究科教授、現代中国学会理事長、中国の人権問題に長年関心を持っている(詳しくはhttps://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/people/people003227.html)。滕彪が登壇した国際シンポジウム「中国リベラル派知識人の挑戦と日本の役割」でコメンテーターを担当した。

中訳 こちら;英訳 こちら

あなたたちの手紙を、とてもじっくり、真剣に読みました。フェミニストの仲間たちで何度も議論し、何度も練り直し、書き上げたのだろうと思います。とても感動しました。

私自身、この問題をとても重視していますが、他にも同様に人権擁護のため、急な対応を要するプロジェクトを多数抱えています。そのため毎日非常に忙しく、すぐにお返事できませんでした。

それでもなんとか、3月16日のシンポジウムの前にお返事を書きたかったのです。だから今、睡眠時間を削って書いています。シンポジウムの前日の3月15日には、滕彪氏やその他シンポジウムの登壇者、研究者やメディアの方々と議論しました。私自身、知り合いのジェンダーの研究者や性暴力被害者の支援をしている友人、弁護士などにも意見を聞きました。まだ十分な知識や経験を有していませんが、今、私なりに考えていることを、お伝えしたいと思います。

滕彪氏がシンポジウムに参加することについて、私も明治大学国際労働研究所のプロジェクトに関わる身として、研究所の人たちと共に議論を重ねてきました。私自身は、シンポジウムを企画する準備の段階で、私たちができることはやったと考えています。

皆さんは、滕彪さんが「公共の人物」であり、独立した第三者による公開の調査が行われていないにも関わらず、何事もなかったかのように公的な活動に参加し続けることは不適切だと書いておられます。

その点については、滕彪氏から、理事を務める複数の団体や講義を受け持つ大学で、専門家による検討委員会が開かれ、議論が行われたと聞いています。大学については、そこで勤務する教員にも確認しました。その報告書の内容を公開しなければ、判断ができないと思われるかもしれませんが、私はその必要はないと考えています。

性暴力に関わる裁判でも、当事者やその家族、関係者のプライバシーを侵害したり、二次被害が生じたりする可能性がある場合は、非公開で審議が行われます。滕彪氏のケースについて、私はそれに該当すると考えています。

真相を明らかにすることがもっとも重要ですが、今回容疑として取り上げられている「レイプ未遂」については、女性と滕彪氏の間で証言が食い違っています。密室で起こったことであり、他に物的証拠や証言がほとんど得られない状態ですから、私たちには判断ができません。あなたたちの手紙には、「被害者」という言葉がありましたが、「レイプ未遂」については認定できていません。

誤って「加害者」とされた場合、その人やその家族や関係者を傷つけ、新たな被害を生むことになってしまいます。真相が明らかではないからこそ、慎重に議論しなければならないのではないでしょうか。

法律による公正な処遇を得られないから、裁判所や警察だけに頼ってはいられないから、♯MeToo運動が広がっていったことはよくわかっています。私自身、弦子さんや伊藤詩織さんと交流し、彼女たちから直接さまざまな話を聞き、共に涙を流しました。私はフェミニズムの専門家ではありませんが、最近積極的にジェンダーの観点から論文を書き、フェミニズムについても学んでいます。無名の人が告発できず、告発しても誰にも気づかれず、苦しい思いをしていることもわかります。私は#MeToo運動をサポートしたいという強い気持ちを持っています。構造的な差別を解消するために、私自身も力を尽くしたいと考えています。

しかし、現実はとても厳しいです。不平等な社会の構造、不公正を容認する制度や政治システムを変えるためには、時間も労力もかかります。長い間かけて人間が、社会がつくってきたものを短い時間で急激に変えようとすると、とても強い力をかける必要が出てきます。それは暴力となり、思っても見ない形で人を傷つけ、別の被害者を生むかもしれません。世界各地で起こった多くの社会運動において、そのような状況が生じてきました。

「対話の空間」を作っていくことに賛成しますが、感情的な対立や暴力を伴う発言や行動は避けなければならない、理性を重んじなければならないと私は考えています。私は今回のことで、努力を続けてきたフェミニストたちが対立し、せっかく築き上げた運動の基盤が壊れてしまうことを恐れています。そうした分断の構図は、結局のところ、男性中心の社会を活気づけることにつながってしまいます。そうならないように、フェミニストの間でも、フェミニストではない人たちとの間でも、異なる意見を調整しながら、粘り強く対話を続ける必要があると、私は考えています。

                                                                                     東京大学 阿古智子

2024年3月16日

冯媛さんからのコメント投稿

中国語原稿 こちら;英訳 こちら

概要:在日のフェミニストの私たちが、明治大学での滕彪氏の講演に対する公開質問状を発表しました。私たちは阿古智子教授からの回答と、冯媛さんからのコメント投稿を受け取りました。ここで一括して発表し、皆さんに読んで議論に参加していただきたいと思います。この件にご関心がございましたら、女権学論または私たちのメールにご投稿ください。投稿受付:deonb6342@gmail.com

フェミニスト活動家。北京為平婦女支援ホットラインの共同運営者。ジェンダー平等を推進する活動家。1980年代から、メディア・貧困援助・コミュニティ作り・教育・研究・NGO活動などを通じて中国のジェンダー平等を推進してきた。

滕彪氏が明治大学での国際シンポジウムでの公開講演について

明治大学国際労働研究所が「中国リベラル派知識人の挑戦と日本の役割」と題されたシンポジウムに、「強姦未遂」の告発を受けた滕彪氏をゲストとして招待したことについて、在日のフェミニストたちは疑問を呈する公開書簡を発表しました。この公開書簡に署名した121人のうちの一人として、私の見解を述べさせていただきたいです。#MeToo運動や性暴力に関する議論への貢献になれば、幸いだと思います。

この公開書簡は、主催者に性暴力の話題への関心、また公衆に対する適切な対応を呼びかけるものとして理解しています。公開書簡の作成者から見れば、滕彪のような「公共人物」に対する告発の対応として、とくに社会で広範な関心を呼んだ場合では、独立した第三者による調査、またその結果の公表が考えられます。これこそが公衆や事件に関心を持つ人にとっての「回答」になり得るし、当事者たちへの尊重と責任が見られます

現状では、独立した第三者による調査が行われることは理想的なのですが、公正かつ厳格な手続きに基づく調査が行われるのであれば、(第三者ではなくても)関係を持つ機関やそれによる依頼調査でも、十分な信頼性があると考えられます。公開書簡はその調査結果の公表を求めるのは、決して性的暴行や被害の詳細の公開を求めているのではなく、正当な調査の手続きとその結果の公開を求めていると私は理解しています。

現実世界では、性暴力(セクシュアルハラスメント、DV)だけでなく、多くの紛争や侵害行為、または犯罪(盗難、強盗、暴行など)は、第三者に目撃されせずに発生します。それでも、一般市民、関連する機構、司法機関は、様々な方法を用いて証拠を見つけ、その証拠に基づいて判断を下すことができます。たとえ特定のケースにおいて、調査が様々な理由によって最終的に明確な侵害行為や加害、犯罪の存在を認定することが難しい場合でも、調査結果で調査員の判断が反映されることもあります。例えば、事件が告発された通りに起きた可能性はどれくらいか、または誤解の可能性はあるかなどです。証明または反証の結論が得られるかどうかにかかわらず、調査報告書の結論部分には、対応方法や今後の対策/被害防止の方法などの改善するための提案が含まれます。このような調査プロセス、結論、提案は、当事者たちに最低限の公正な結果を与えることができます。このような結果を公表することは必要であるし、非常に建設的であると考えられます。

私も滕彪氏の自己弁護と謝罪のことを前から知っていました。告発された行為者が自らを弁護することは、権利であり、本能でもあります。実際、告発者と告発された者の証言が互いに一致しないこと、あるいは相反することは法廷であれ、私的空間であれ、舆論の場であれ、よく見られるです。滕彪氏は法律の専門家であり、法廷で自己不在拒否特権を持っていることをよく知っているはずです。「強姦未遂」の告発がされた数週間前から、すでに滕彪氏が自分が公に告発されることを知ったはずです。そのため、滕彪氏が自分の務めている機関、彼と協力関係にある大学機関、また各国の専門家、学者、資金提供者、さらに彼が重視するフェミニスト活動家に自分の無実を訴えるための時間とチャンスがありました。その後、滕氏は「公開謝罪」を発表し、自分の行為は「受け入れられべきではなく、許されるべきではない」と考え、「私が犯した過ちであり、その責任も私一人で負うべきだ。だから、私の友人たちは絶対私のために弁護しないでほしい」と述べました。[1]滕彪氏の「謝罪」はまだ一年にも足らず、今回の公開書簡の署名活動は、彼が約束を守り、自分の行動の結果を勇敢に受け入れ、友人たちが彼のために弁護させない、かつ責任を分担させないように注意するものです。

滕彪氏は常にメディアや多くの公共活動に積極的に参加していますが、これは彼個人の自由です。しかし、組織や機関などの公開のイベントに招待されることは、公共的な出来事です。そのため、一部の日本在住のフェミニストたちはシンポジウムの開催直前にこの公開書簡を発表しました。#MeToo運動が世界中で広がったきた現在、多くの機構と運営側は、「強姦未遂」に該当しない行為であっても、「非常に不器用な求愛」であっても、その行為の受け手がそう捉えない限り、その行為が不適切だと一般的に思われます。行為者や関連機構は、責任や対策について問われるし求められます。さらに、私の知る限りでは、滕氏に対して、複数の女性が異なる範囲において自らの経験(滕氏によるセクハラ/性暴力を行われたこと)を公表し、一部の機関に正式に苦情を申し立て、詳細な証言や証拠を提出していました。これらの機関が関連情報を一切公開しなかったため、女性の当事者の声がそれらの機関に耳を傾けられ、調査され、考慮されたかどうかは不明です。しかし、少なくとも「強姦未遂」の告発と関連するイベントの主催者は、2023年6月に公開声明を発表し、以下3点の過ちを認めました。①「理非曲直を問わず、当事者の女性(被害者)が(性暴力疑惑の)事件に一定の責任を負っていると仮定し、乱暴に彼女を非難することで、彼女を深刻に傷つけること;②主催者は会議や所属組織、個人の声望を過度に重視し、一人のチームメンバーあるいは会議の参加者が被害に遭う時の気持ちを無視したこと;③チームの責任者としての責任から逃れ、当事者の女性に適切な支援を提供しなかったこと。このように、以上の例の中ののイベント主催者の反省は、少なくとも明治大学国際労働研究所にとってご参考になることが考えられます。

また、明治大学国際労働研究所は、国際労働総会が2019年に採択した「仕事の世界における暴力とハラスメントの根絶に関する条約」とその任意議定書をご存じであるはずです[3]。この条約は、暴力とハラスメントを定義し、共通の枠組みを設定し、社会的な対話を通じて、公正で尊重され、安全な労働環境を構築することを目指しています。都市部も農村部も、正規や非正規な経済活動のすべての私営および公共的な部門において、この条約が適用されます。また、仕事に関連する出張や旅行、研修、イベント、社交活動、および仕事に関連するコミュニケーションもこの条約の対象となります。このような条約が既に存在する状況の中で、自由と権利をテーマとする一般向けのシンポジウムを開催する際に、既に提起された懸念や疑問、予想可能な反対意見を無視することは、非常に遺憾だと言わざるを得ません。

公開書簡の内容と言葉は平和的であり、主催側の関心を喚起し、適切な対応を取ることを目的としています。この書簡は、声望かつ責任感のある機関としての主催側の社会的な配慮と責任感を示すように呼びかけています。その趣旨は、主催側の労働問題の専門性や自由権利に関する国際シンポジウムの目的と完全に一致しています。

3月16日、シンポジウムの当日に、数人の女性がシンポジウムの会場の外で丁寧に自分たちの反対意見を表現しました。仮に公開書簡が誰かに傷をもたらしたというならば、それは滕氏が自分の数ヶ月前の公開謝罪から逸脱した行動によるものです。彼の人権擁護者としての名誉、自分の家族や関係者の方々に対して傷をもたらしたのは彼自身であり、決してこの公開書簡ではありません。

滕氏自身は最初も今も認めないかもしれませんが、現在では数人の女性が提供した(セクハラ/性暴力の)証言と証拠に基づき、性暴力・セクシュアルハラスメントを反対する人々にとって、滕氏が性暴力の加害者であると判断します。捏造によって彼に加害者のレッテルを貼るわけではありません。今まで、滕氏によってもたらした傷が止まるか、治るか、続くか、悪化するかは、すべてこれからの滕氏自身の選択によって決まるものです。明治大学国際労働研究所は公立機関ではありませんが、社会的な権威のある学術機関として、公衆や公共的な話題に関心を持つ人々に対して、逃れられない社会的な責任を持っていると考えております。

馮媛 北京為平婦女支援ホットライン

2024年3月18日

[1] 滕氏に対する直接および間接の引用は、2023年6月22日のRadio Free Asiaの報道から引用されます。

https://www.rfa.org/mandarin/yataibaodao/kejiaowen/kw2-06212023133935.html

[2] 同上

[3]日本語訳の参照:https://www.jtuc-rengo.or.jp/activity/gender/data/harassment/ILO_201907.pdf?30

稲垣豊からのコメント投稿

中訳 こちら

(これはシンポジウムをお手伝いした個人としての感想です。シンポジウムも意思表示のアクションも社会的な取り組みですので、いろいろな感想や反応があると思います。そのうちの一つだと思ってください。)

研究所主催のシンポジウムに滕彪氏を招待したことについての質問状を拝見しました。とても丁寧な内容だと感じました。いまだ女性たちへの抑圧がつづく現代社会において、#MeToo運動の流れからしても、当然のご質問内容だと思いました。シンポジウムの当日には、他の個人やグループが公道でアクションをしていたようでしたが、そのような勇気ある行動に対して、ご挨拶もできず申し訳なく思っています。

大変遅くなりましたが、以下、質問に沿って感想を述べてみたいと思います。

質問1について。私は滕彪氏の事件を報道で読んで知っていました。滕彪氏を招へいすることで、フェミニストから厳しい指摘があるであろうことも想定していました。その後、複数の研究者が滕彪氏とこの事件の件について話をして、被害者との意見の食い違いはあるが、全体として滕彪氏が反省、謝罪していることや、滕彪氏が引き続きフェミニズムや社会的な指摘に対して、謙虚に受け止める姿勢だったことなどを聞いていました。

質問2について。この事件については、レイプ未遂であったかどうかや身体的接触があったかどうかなど、当事者間の間で食い違いがありますが、少なくとも滕彪氏が認めて謝罪した「不器用な求愛」行為だけでも、当該の女性にとっては脅威だったとおもいます。社会一般だけでなく、とりわけ社会運動のなかでもセクハラや性暴力などがいまでも見られます。女性をはじめとする多くの人たちが、そのような「不器用な求愛」に対する対応に困惑し、ときには性的被害に発展し、すくなくとも精神的な苦痛や圧力を受け、トラウマを抱え続ける事態が、いまでも続いていると思います。そのことについて滕彪氏も、#MeToo運動から学ぼうという姿勢があることを、期待したいと思います。

質問状で研究所に問われているのは、声を上げた人々に耳を傾けて寄り添うことだと思います。私自身も、このような事件が、中国の「民運」だけでなく、日本や世界中の社会、家庭、企業、アカデミア、そして社会運動のなかでも続いていることに対する認識の甘さがありました。滕彪氏が登壇することで、そのような声が無視されたと思われたことに申し訳なく思い、みなさんの声に真摯に耳を傾け、ともに考え、教えを乞いたいと思います。

主催者である研究所が、みなさんの問いに誠実に答えることがなければ、今後の取り組みや滕彪氏らリベラル派の人権の取り組みも、フェミニストの皆さんたちから信頼を得ることはできないと思っています。中国と世界の民主化を展望するうえで、天の半分を支える女性たちの参加がなければ、強大な相手には対抗できないと思います。

次に三つ目の質問にもかかわることですが、声を上げた人々が逆に不安に駆られてしまうこと、告発がなかったことにされること、声を上げ指摘することでさらに批判にさらされる事態に直面するかもしれないということについて、僕の認識が甘かったと思います。その点についてはお詫びするとともに、そのような不幸な事態にならないように努力したいと思います。

本来必要だったのは、フェミニズムや#MeTooとの恒常的な対話や交流だとおもいます。つまり、自分では思いが至らない問題について、女性たちが主体的に参加し、問題を指摘しやすい環境に配慮し、僕自身も社会的な議論の中に常に身を置くということです。そして相互に意見が交わせる安心した関係性のなかで、深刻な事態につながる可能性のある事は相互に指摘しあえるように配慮しつつ、皆さんからの指摘を受け止め、真摯に対応することだったと思います。

またセイファースペースの確保、グラウンドルールの確認、告発者の防衛、第三者機関による調査など、#MeTooや社会運動での議論や実践を今後の研究課題や活動スタイルのなかに組み込んでいくことで、一次被害、二次被害を防ぐことにつながるのではないかと思います。それは社会全体をフェミニズムの主張によってブラッシュアップするということでもあり、僕自身もつねに意識変革が必要だということだと思います。

四つ目の質問についても、たいへん耳の痛いことです。性暴力やハラスメントはこの社会に隅々まで浸透しているなかで、すべて個人の自覚に頼っているだけで、具体的な取り組みがなされていないという現状があります。今回のシンポジウムでは登壇者に女性がほとんどいないという残念な状況のなか、登壇された阿古先生やシンポジウムを支える女性スタッフ、大学当局の女性職員らのがんばりで実現にこぎつけたという一面があると思います。そのようななかでは、やはり常に女性たちからの指摘に向き合うような環境づくりが必要だと思いました。

公開書簡で述べられている質問の根拠は、そのいずれも、とても説得力のある内容で、大変勉強になります。

本来であれば、もっと早く、皆さんの意見を聞く機会を作り、積極的に応えていかなければなりませんでした。指摘されている問題は、滕彪氏個人の問題ではなく、私個人のことにも当てはまるし、性暴力が容認される社会全体の問題でもあり、そのような社会を転換するための公共の学習の場となるはずのシンポジウムが、逆に女性たちを分断したり、被害をさらに抱え込んだりすることにならないよう、もっと意識的に動くべきでした。たいへん申し訳なく思っています。

私自身はリベラル派ではなく左翼ですが、これを「リベラル派の問題だ」として知らぬふりをするつもりはありません。左翼の中での女性差別はもっと深刻かもしれません。社会変革の同盟者であるリベラル派、そして天と社会運動を支える半分の人々や、それ以外のセクシャルアイデンティティを持つ人々との連携なくして、民主的で階級的な社会変革を実現することはできないと思っています。

今回のシンポジウムで提起された様々な議論はとても示唆に富むものであり、その成果を真に社会全体に還元するうえでも、研究所の誠実な対応が望まれます。今後とも継続した協力ができればと思っています。

稲垣 豊

シンポジウムをお手伝いした一人として

オンライン署名活動の結果および公開質問状の回答状況

中国語原稿 こちら

明治大学での滕彪氏の講演に対する公開質問状について

ーーオンライン署名活動の結果および公開質問状の回答状況を更新

オンライン署名活動の結果および公開質問状の回答状況

日本時間の3月11日から3月16日にかけて、明治大学国際労働研究所が主催する国際シンポジウムに滕彪が招待されたことを受け、在日フェミニストたちは公開質問状を発表し、本件に関心を持っている世界中の人々に向けて、共同署名を集めるキャンペーンを始めた。キャンペーン終了時点で、学生、弁護士、学者、NGO関係者、ジャーナリスト、社会活動家、大学教員・研究者、元明治大学の訪問研究員、メディア・映画制作関係者、退職したエンジニア、自営業者、会社員など様々な分野、13の国と地域から121名の署名が寄せられ、その中には「女権学論」、「My Duty in Deutschland」といった団体も含まれていた。3月14日には、登壇ゲストの阿古智子氏、張伦氏、呉国光氏から回答があった。

署名者は東京、千葉、仙台、神戸、滋賀、台北、香港、北京、上海、重慶、東南アジア、クライストチャーチ、メルボルン、ボストン、ニューヨーク、カリフォルニア(サンフランシスコ、サンディエゴも含まれている)、シアトル、トロント、ワシントンDC、デトロイト、ハワイ、ダラス、バージニア州、ノースカロライナ州、オハイオ州、バンクーバー、ロンドン、シェフィールド、フランクフルト、ベルリン、アムステルダム、ロッテルダム、ユトレヒト、ボローニャなど、約40の地区や都市にわたっている。中国本土、香港、台湾、日本、東南アジア、オーストラリア、ニュージーランド、オランダ、イタリア、ドイツ、イギリス、カナダ、アメリカなど、13か国・地域にまたがっている。

署名の人々は、滕氏が招へいされることに対して、明治大学および共同登壇者に向けて説明を求めるとともに、#MeToo告発者への二次被害やハラスメント被害を防ぐための対策を今回のシンポジウムの議題に取り入れるように呼びかけている。

(ここから)

署名活動では、多くの人から真摯なメッセージは寄せられている。ある人は、活動の発起人に対する支持と感謝の意を表明している。「民主運動や学術活動のジェンダー問題に注目してくれて、お疲れ様です!」「署名活動を行ってくれて、ありがとう。MeTooのサバイバーを支援する機会を与えてくれて、ありがたい。」「Support what you do!」「女性の権利を守ることを支持します!」「一緒に頑張ろう!世界が変わるまで諦めないでください。」

滕氏を告発した当事者である心語さんへの支持を示す人もいる。「心語さんを支持します。女性のメディア関係者は自分自身を守る自由があります。いわゆる『大局』のために、犠牲になる必要はありません。」

また、滕氏を直接批判する声もある。「私の知る限り、心語さんへの被害は滕氏にとって、初めてではなく、最後のセクハラ行為でもありません。滕氏は 『積極的』に謝罪しましたが、自分の行為の本質を認識していないか(または認めたくない)ため、謝罪は誠実ではなく無効です。滕氏はセクハラの知識をちゃんと学び、真剣に反省してほしいと願っています!時代は変わりました。滕氏は多くの公共資源を占有し、今後ますます多くの人が声を上げ、本当に改心したかどうかことを見守ります。」「人に平等な扱いすらできない人間に、革命を語る資格はありません。」

また、一部のメッセージでは、「滕彪氏は強制わいせつ(未遂)を行い、真の謝罪をせず、事実を否認しています。被害者によれば、告発された後に、滕彪氏は被害者を中国共産党のスパイだと誣告しています。明治大学国際労働研究所が滕氏を招待することは、性暴力やセクシュアルハラスメントの加害者を容認する行為です。」と指摘されている。

今回の公開質問状は、東京時間の3月13日に、明治大学国際労働研究所および登壇ゲストに送られた。そして、14日前後に3名のゲスト教授から返信を受け取った。阿古先生は、「この問題について、最近明治大学や他の部署の皆さんと一緒に考え、議論しています。また、フェミニスト専門家の意見も聞いています。後ほど、必ず自分の考えを整理し、ご返信します」と回答した。 張倫先生は、「信頼していただき、ありがとうございます。また、署名者の方々の意見表明の権利と立場を尊重します。会議の組織や関連議題について、時間の制限で、議程の調整や追加が可能かどうかは分かりません」と述べた。 吳国光先生は、「性別平等の推進やセクハラへの取り組みについて、あなたたちの努力に感心しています。私はあなたたちの活動に参加するための適切かつ効果的な方法を模索しています」と述べた。

シンポジウム終了後、阿古智子氏、馮媛氏、胡平氏、稲垣豊氏、およびネット上の多くの関心者は、滕氏の問題や#MeTooの話題をさらに議論し、投稿した。関連する議論や意見は、女権学論の公式ウェブサイトや在日中国人フェミニスト連帯会のmatters、Twitter、Instagramのアカウントなど、複数のプラットフォームで、中和英の3か国語で更新されている。

※女権学論:https://chinesefeminism.org/2024/03/17/meiji-teng-biao-protest/

在日中国人フェミニスト連帯会のmatters:https://matters.town/@chinesefeminist

Instagram:https://www.instagram.com/feministchina_jp/

Twitter:https://twitter.com/FeministChinaJP

今回の署名活動は公共的意義があるため、発起人たちはメールで署名者に、自身の署名がインターネット上で公開されることに同意するかどうか尋ねた。2024年3月31日の東京時間までに、121人の署名者のうち63人が同意の返信をいただいた。本文において、公開質問状および署名リストを公開する(公開信の末尾を参照)。また、シンポジウム開催前に受け取ったゲスト教授からの回答も同じく添付した。今後も議論や投稿を期待している。

※注:署名募集活動のフォームを設計する際に、「研究所と登壇ゲストへの公開質問状に署名する」という選択肢はあったが、「署名をネットで公開されることに同意する」といった選択肢はなかった。そのため、活動終了後、ずべての署名者にメールでネットでの署名公開に同意するかどうかを問い合わせた。

付録1:公開質問状の全文と連署者リスト(121人署名者の中の63人)

①明治大学国際労働研究所へ

明治大学国際労働研究所 御中

突然のご連絡失礼いたします。私たちは性暴力の問題に関心を持つ、世界各地に住んでいるフェミニストです。

この質問状は貴研究所宛てのものであると同時に、すでにインターネットで公開された書簡でもあります。貴研究所が3月6日に開催する予定の国際シンポジウム「中国リベラル派知識人の挑戦と日本の役割」において滕彪が登壇することについて、4点の質問をさせていただきたくご連絡いたします。

以下は私たちが公開質問状を送る理由について述べさせていただきます。

貴研究所が3月16日に開催する「中国リベラル派知識人の挑戦と日本の役割」と題するシンポジウムで、滕彪は一人の登壇者として招待されます(シンポジウム開催の知らせ:<https://www.isc.meiji.ac.jp/~itls/report/2024/0316.html>)。

しかし去年、台湾の#MeToo運動が注目を集める中、滕氏はジャーナリスト、独立中文筆会の元副会長である心語さん(仮名)から性的暴行について告発されました。BBCの取材(下記報道①を参照)では、心語さんは、2016年にインドで開催された会議期間中に、滕氏がホテルの部屋で、彼女に「襲いかかった」と告発しました。心語さんが必死に抵抗し、叫んだ後、滕氏の行為は中止したと証言しています。

それに対して、滕氏は2023年6月にTwitter(現X)で声明を発表し(下記報道②を参照)、彼自身の行動は「許されるべきではない」、「相手が受けた被害に対して申し訳ない」と述べました。一方、「襲いかかった」といった心語さんの指摘を否定し、自らの行為は「不器用な求愛である」と主張しました。これに対して、心語さんはインタビューで滕氏の声明が「不誠実である」と指摘し(下記報道③を参照)、この事件は「強姦未遂」であると主張しています。それに対して、滕氏は自分が「強姦未遂であることは事実無根であることを証明する確実な証拠を持っている」と述べましたが、それ以降詳しい説明をしませんでした(下記報道①)。現時点では、滕氏は疑惑を解明するための証拠を提出しておらず、第三者による調査も公開の状態では行われていません。

ニュース原文のリンクは以下の通りです。ご参照ください。

<英語>

①BBC news 

https://www.bbc.co.uk/news/world-asia-china-65887986

https://twitter.com/bbcchinese/status/1672158047685459968

<中国語>

②自由亚洲电台https://www.rfa.org/mandarin/yataibaodao/kejiaowen/kw2-06212023133935.html  

③菱媒体

https://www.worldjournal.com/wj/story/121344/7252621?zh-cn

④NGOCN

https://ngocn2.org/article/2023-06-26-zao-bao

<日本語>

⑤RecordChina

https://www.recordchina.co.jp/b916169-s25-c30-d0198.html

貴研究所はこれまで国際的な労働運動や労働組織に関する研究に貢献し、アジアの人権、民主主義、自由に対する深い関心を持っていることに敬意を表します。

しかし、「Women’s rights are human rights」。学術活動のゲスト講演者としての滕氏が心語さんから上記の「強姦未遂」の告発を受けたことは、無視されるべきではないと私たちは考えます。(性暴力を含む)暴力から免れる権利もまた人権の重要な一部です。言うまでもなく、大学は司法機関ではありませんが、#MeToo告発の対応とジェンダー平等の推進は司法機関のみに頼るべきではなく、社会全体が責任を持って取り組んでゆくこととして考えられるべきだと私たちは思います。したがって、以下の4点に関して質問させていただき、貴研究所のご説明をお願いします。

①貴研究所は滕氏を登壇者として招待した際に、彼が上記の心語さんから受けた「強姦未遂」に関する告発(上記報道①を参照)についてご存知でしたか。あるいはその告発についての関連記事を確認しましたか。

②もし貴研究所が、滕氏を招へいする際に告発についてご存知ではなかった、あるいは確認しなかった場合、上記の内容をお読みいただければ状況を把握できると考えられます。貴研究所はシンポジウムの主催者として、この件についてどのようにお考えでしょうか。滕氏の登壇は予定のままでしょうか。

③滕氏を登壇者として依頼した場合、貴研究所は彼が登壇することが#MeTooの告発側に対して二次被害を及ぼす可能性について既に検討したこと、あるいはこれから検討することはありますでしょうか。もしそういった検討を行わなかった、あるいは行わない場合、その理由をご教示ください。もし#MeTooの告発側に対する二次被害を及ぼす可能性について検討を行った場合、どのような具体的な対策を考えておりますでしょうか。

④シンポジウムを開催する際に性暴力やハラスメント被害を防ぐために、運営側にはどのような対策や配慮がありますでしょうか。

この四つの質問は以下の理由に基づいています。

まず、「民運圏(中国の民主化を目指す組織・関係者)」で起きた性暴力/セクシャル・ハラスメントには不可視性があります。一般的に、性暴力の多くは私的な空間で起こり、目撃者がいないため、証拠の収集と調査が難しいです。さらに、中国の「民運圏」において性暴力の被害者が告発した場合、当局からの弾圧に加え、「民運圏」の仲間たちからの非難を受けることも多くあります。被害者たちは、民主化運動の有名人に「濡れ衣を着せている」として、「中国共産党に利用されている」、「民主化運動への妨害」などと非難されることがあります。被害者はそのような二次被害を受け、非常に孤立し、救済や支援を求めにくい状況に置かれます。

明治大学は「権利自由」を建学精神の一つとしています。その一方、リベラルな知識人を対象としたシンポジウムで、上記の報道のように、登壇者が他者の権利と自由を侵害したとされる告発を無視しているとしたら、私たちは大変残念に思います。

次に、私たちは特定の登壇者または特定の大学を対象として反発意見を述べているわけではないことを強調させていただきます。どのような公共的な活動においても、主催者と参加者は民主、自由、権利などの基本的な価値観を重要視するように、ジェンダー問題を重要視し、性暴力に反対すべきだと私たちは考えています。

私たちは、上記の報道のような性暴力を告発されたゲストを招待する際には、基本的な状況の確認と倫理的な考慮を行い、公的なイベントではジェンダー包摂と安全な環境づくりに積極的に取り組むべきだと考えます。

最後に、私たちはセクシャル・ハラスメントや性暴力の問題は個人の問題ではなく、組織的かつ社会的な問題であると考えております。こういった問題が個人のレベルに留まり、組織や社会全体で対策が講じられなければ、人権が保障されることは期待できません。上記の報道にある滕氏が受けた告発は、現在の制度によって真相が明かされないとしても、私たちはこの問題に関心を寄せる権利があり、貴研究所も公衆の質問と疑念に対して説明をする責任があると考えております。

この度、私たちはこの件に関心を持っている世界各地の人々からの署名をいただきました。私たちは貴研究所が以上の四つの質問へのご回答とご説明をなさることを共に願っております。

お忙しいところ恐縮ですが、ご回答を心よりお待ちしております。

性暴力問題に関心を持っているフェミニストたち 

発起人ならびに署名者:

陶鈺,楊謹伊,李羽美,夏虹, 尹恩宜,陳昭路,郭晶,馮媛,覃玉蓉,沈秀華,Siyuan Yin,杜東,Zoe Zhao,Chole,Grutsky,魏萌,邱奕禎,一樓,オリビア, 林瞾,Nie Yijun,栗子,Vianna W,顧雨琦,Zoe,典典,李麥子,鄭楚然,熱田敬子,遠山日出也,Auu,Julia Yuan,吳知晴,葵達,Corenas,Sofi,Eva Liu, LI ZHENGCHAO,Wendy,April Jiang,TANG WANQIU,Jonas Hong,佐藤健一,心語,Huang ming,陸綺,趙思樂,林思,潘嘉偉,kiki,陳秋曉,森たか子,桑原たつみ,Witch,金剛力士,劉慰健,黃明飛,Zoe Tian,夏巢川,楊海平, Amanda House,女權學論,My Duty in Deutschland

敬具

※署名にはランキングが存在せず、回答時間の順番に従うだけで記載されている。質問状は3月13日に研究所及び登壇ゲストに送られた際に、質問状の末尾には60名以上の署名者がいたが、同意のメールを返信しなかった人の氏名は削除された。また、13日後新たに署名活動に参加する人の名前が追加された。

②滕彪と共に登壇される先生たちへ

**先生:

突然のご連絡、大変失礼いたします。私たちは世界各国在住のフェミニストです。

このメールを送るきっかけは、○○先生が3月16日に明治大学国際労働研究所で開催されるシンポジウム「中国リベラル派知識人の挑戦と日本の役割」に、滕彪という方と共に登壇されるからです。

滕氏が2023年で、報道によれば、心語さんに「強姦未遂」として告発されたこと(下記報道③を参照)について詳しくご存じではないかもしれませんが、以下はその告発についての中国語と英語のニュース記事のリンクを記載しますのでご参照ください。

<英語>

①BBC news 

https://www.bbc.co.uk/news/world-asia-china-65887986

https://twitter.com/bbcchinese/status/1672158047685459968

<中国語>

②自由亚洲电台https://www.rfa.org/mandarin/yataibaodao/kejiaowen/kw2-06212023133935.html  

③菱媒体

https://www.worldjournal.com/wj/story/121344/7252621?zh-cn

④NGOCN

https://ngocn2.org/article/2023-06-26-zao-bao

<日本語>

⑤RecordChina

https://www.recordchina.co.jp/b916169-s25-c30-d0198.html

以上で報道された滕氏への告発がなされてからわずか1年足らずですが、彼は明治大学で行われるシンポジウムに招待され、かつ「リベラル知識人」と「社会対話」について公開講演するということに対して、私たちは大きな疑念を抱いております。

私たちは、明治大学国際労働研究所は、上記のような告発を受けたゲストを招聘する場合、当事者の一人であるゲストに状況確認をする責任があり、招へいされるゲストは会議のテーマや精神に合致するかどうかを検討する必要があると考えます。

私たちは、公共の人物が専門分野での活動で上記報道のような性的暴行の容疑を明確に告発された場合、独立した第三者による公開の調査が行われずに、何事もなかったかのように公的な活動に参加し続けることは不適切であると考えます。

真相が明らかになるまで、その人が招待されるイベントの規模が大きければ大きいほど、またその人が担う役割が重要であればあるほど、#MeTooの告発は矮小化され、被害者に対してより大きな被害をもたらす可能性が高いと考えております。 ♯MeTooの告発はゴシップではありません、決して軽く読み流すべきものではないと私たちは考えます。

どの国の#MeToo運動においても、その裏には被害者の涙があります。中国では、朱軍や劉強東のような加害者が依然として活動し、被害者たちは当地の法律による公正な判決を得られないままでいます。被害者の弦子やJingyaoたちは弾圧され、ネット暴力など二次加害に直面しました。日本でも、ジャニーズ性暴力の被害者は告発した後、ネット上で大量の匿名の中傷と誹謗に遭いました。伊藤詩織さんは政治家からほとんど支持を受けず、勝訴した後も自身の国においてはまるで追放された人であると感じ、海外に移住してからこそ、ジャーナリストの仕事を続けられます。多くの無名な人は告発することができず、告発しても誰もに気づかれず、すぐに消えてしまいます。

これらの厳しい現実に基づいて、私たちは#MeTooの告発を真剣に受け止めるべきだと考えています。すべての#MeToo事件を既存の法律や制度に任せることはできません。既存の法律や制度が社会と時代に遅れ、性暴力被害を防止することが難しいということは、多くの研究や事例にも示されてきました。

#MeToo運動が世界的に広がっているのは、現行の法律や制度が性暴力関連の問題を解決できず、被害者に合理的な苦情申し立て・訴訟の方法を十分に提供できていないためです。被害者はメディアを通じて告発せざるを得ず、公衆の支援と支持を頼りにするしかありません。#MeToo運動は、社会制度と構造の問題と不正義に立ち向かうための運動です。既存の制度では公平と正義が実現できない場合、私たちは既存の制度を引き続き守ったり、沈黙したり無視したりするべきではありません。

私たちは、先生たちが上記に報道された滕氏に関する性暴力の告発に関わる当事者ではなく、その告発の真相を解明できないことを存じております。しかし、中国リベラル知識人は常に自由、民主、人権などの価値を呼びかけています。私たちは、性暴力から免れることも基本的人権であり、軽視されるべきではないと考えます。

「対話の空間」はできれば、男性のエリート知識人を中心とした伝統的な「対話の空間」ではなく、告発者/被害者/サバイバーの気持ちを無視することなく、#MeToo告発を軽視することなく、ジェンダー包摂的で安全な社会対話の空間として、積極的に構築されるように私たちは願っています。

現行の社会制度と文化の問題を根本的に反省しない限り、性暴力の被害防止はできません。これも私たちが♯MeTooに関心を寄せる理由でもあります。私たちは明治大学国際労働研究所に公開質問状を送る形で、#MeTooについて社会の方々と共同で議論するように呼びかけます。持続的な議論、努力を通じて法律や社会の変革を促進することを願っております。

大変恐縮ですが、最後に先生たちにお願いがあります。明治大学国際労働研究所に向けて、滕氏の国際シンポジウムへの招待についてご説明いただくように呼びかけていただれば幸いです。ジェンダー平等の対話空間の構築についても協力していくことを期待しております。

ご多忙を極めていらっしゃる中誠に恐縮ですが、このメールを一読いただければ幸いです。もしご返信していただければ、公共の議論としてインターネット上で公開させてください。ご理解いただければ大変ありがたく存じます。

何卒宜しくお願い致します。

性暴力問題に関心を持っているフェミニストたち

発起人ならびに署名者:

陶鈺,楊謹伊,李羽美,夏虹, 尹恩宜,陳昭路,郭晶,馮媛,覃玉蓉,沈秀華,Siyuan Yin,杜東,Zoe Zhao,Chole,Grutsky,魏萌,邱奕禎,一樓,オリビア, 林瞾,Nie Yijun,栗子,Vianna W,顧雨琦,Zoe,典典,李麥子,鄭楚然,熱田敬子,遠山日出也,Auu,Julia Yuan,吳知晴,葵達,Corenas,Sofi,Eva Liu, LI ZHENGCHAO,Wendy,April Jiang,TANG WANQIU,Jonas Hong,佐藤健一,心語,Huang ming,陸綺,趙思樂,林思,潘嘉偉,kiki,陳秋曉,森たか子,桑原たつみ,Witch,金剛力士,劉慰健,黃明飛,Zoe Tian,夏巢川,楊海平, Amanda House,女權學論,My Duty in Deutschland

敬具

※署名にはランキングが存在せず、回答時間の順番に従うだけで記載されている。質問状は3月13日に研究所及び登壇ゲストに送られた際に、質問状の末尾には60名以上の署名者がいたが、同意のメールを返信しなかった人の氏名は削除された。また、13日後新たに署名活動に参加する人の名前が追加された。

付録2:三名の教授からの回答

上述の公開質問状の送信後、三名の教授がシンポジウム開催前に回答をしている。

一、吴国光教授からの返信

お便りをありがとうございます。旅行中でお返事が遅くなり、申し訳ございません!

性別平等の推進とセクシュアルハラスメントに対する取り組みに敬意を表します!私は適切かつ効果的な方法であなたたちの活動に参加する方法を模索しています。

敬具

吴国光

二、张伦教授からの返信

旅行中と訪問中のため、お返事が遅れ、申し訳ございません。

お便りを受け取りました。信頼していただき、ありがとうございます。あなたたちと署名者のかたがたの意見表明の権利と立場を尊重します。会議の組織や関連議題について、時間の制限で、議程の調整や追加が可能かどうかは分かりませんが、参加者として、主催者のアレンジに従います。私自身の発言については、主体、転換、権利などの問題が関連しており、ご質問状で触れられたトピックに関わりますが、発言の中心ではありません。質問状で記述された当事者に関するいくつかの事項については、おっしゃる通りに仕事や雑務の多忙や健康上の理由で情報が十分に把握できず、真相を理解することが限られているため、目の前で意見を表明できかねます。ご理解をお願いいたします。

敬具

张伦 2024年3月14日 旅行中

三、阿古教授からの返信(一部抜粋)

こんにちは!最近は(中略)で出張し、非常に忙しいです。今ようやくお返事を差し上げ、申し訳ございません。この問題については、最近、明治大学や他の部署の皆さんと一緒に考え、議論しています。また、フェミニスト専門家の意見も聞いています。後ほど、必ず自分自身の考えを整理し、ご返信します。(下略)

敬具

阿古

※注1: 原文は中国語であり、日本語に翻訳された。

※注2:シンポジウム後、早速阿古先生からの返信が届いた。阿古先生の返信は冯媛さんのコメントと一緒に投稿されたことはある。詳細な内容はこちらのURLをご覧ください(matters: https://shorturl.at/zPT48 ;女権学論: https://chinesefeminism.org/2024/03/17/meiji-teng-biao-protest/)。

明治大学国際労働研究所からの返事

中訳 こちら

「性暴力問題に関心を持っているフェミニスト」の皆様へ

みなさまから頂いたご質問に明治大学国際労働研究所としてお返事させていただきます。

まず、お返事が大変遅くなってしまったことをお詫びします。本来であればシンポジウム開催前に皆さんへご回答すべきでした。本シンポジウムの登壇者の何人かは返信をされていましたので、尚の事しっかりと対応すべきでした。

事後になってしまったのですが、4月9日、4月19日の2度にわたり研究所の全体会議を開催し、質問状への対応をめぐり議論をしました。

質問状では、シンポジウムの理念の一つであるリベラリズムや人権の問題から提起されるだけでなく、本学の建学の精神や性暴力の構造的問題にも言及されるなど、今後の研究所の方向性にとっても大変意義のある内容が含まれています。

本学においても性被害を含むハラスメント全般に対する相談窓口やガイドラインなどがあることから、今後とも安全な環境づくりのために努力したいと思います。

ひとえに当研究所の運営・連絡体制の不備から、関係者のみなさまにはご迷惑をおかけし、回答も大変遅くなってしまったことを改めてお詫び申し上げるとともに、今後の研究所の運営にとって貴重なご指摘をいただいたことに感謝します。

2024年4月19日

明治大学国際労働研究所

皆様への回答&国際労働研究所からの公式回答への返事(5月)

中国語 こちら

在日フェミニストたちから、関心を寄せていただいた皆様への回答および明治大学国際労働研究所からの公式回答への返事

ーー明治大学での滕彪氏の講演について

2024年4月19日、私たちは明治大学国際労働研究所から正式な回答を受け取り、その内容をSNSに投稿しました。 その後、この問題に関心を寄せる多くの方々からフィードバックやコメント、質問をいただきました。これまでの皆様の関心に心から感謝するとともに、質問状に正式的に回答してくださった明治大学国際労働研究所にも感謝をお伝えします。これらのフィードバックや回答などは、公共的な議論の一環として非常に意義のあることだと私たちは考えております。

今回、寄せられてきた多くの質問の中からいくつかを選び、回答させていただきます。また、本回答は同時に国際労働研究所へも返信としてメールで送付します。

質問①:結局のところ滕彪は明治大学の国際シンポジウムに出席したのでしょうか?

回答:はい、出席しました。公開質問状は2024年3月13日に研究所に送られ、翌14日の前後に3名の招聘ゲストの方から回答を受け取りました。それにもかかわらず、滕彪は予定通りに3月16日に出席し、講演を行いました。当日、会場外では#MeTooに関するポスターを配布した方やプラカードを持って抗議した方もいました。詳細は「在日フェミニスト連帯会」のMattersのホームページおよび「女権学論」のホームページをご覧ください。

matters:

https://matters.town/@chinesefeminist

女权学论:https://chinesefeminism.org/category/%e5%a5%b3%e6%9d%83%e8%a1%8c%e5%8a%a8/%e8%bf%91%e6%9c%9f%e6%b4%bb%e5%8a%a8/

質問②:

明治大学国際労働研究所の回答はよく理解できません。何かを言っているようで、実は何も言っていない感じがします。あなたたちは署名活動の呼びかけ人として、どのように理解していますか?

回答:

まず、研究所の正式な回答には、2回の全体会議で検討し、性暴力の議題を検討したことが記されており、この問題を重視していることは示されています。また、回答にも滕氏を弁護する立場は見られませんでした。私たちは、国際労働研究所がシンポジウム後にもこの問題についての検討、議論を続けたこと、その内容も前向きなものであると考えており、これらの一連の対応は意義があると考えています。問題を直視することは変化を推進する第一歩だからです。

あわせて、明治大学国際労働研究所には一つお願いがあります。貴研究所の回答を、滕氏が含まれているすべてのゲストに転送していただきたいのです。この回答は、公共の議論にとっての意義だけでなく、招聘されたゲストにとっても直接的な意味があります。張倫教授から頂いた返信には、「参加者としては主催者の決定を尊重する」と述べているので、主催者からの公式回答は招聘ゲストたちにとっても有益な情報になると考えています。

研究所が2回の全体会議を通して議論した具体的な内容と結果は、私たちには分かりません。しかし、このプロセスでは、滕彪の性的暴行の容疑について議論し、性暴力に関する知識を学んだと信じています。最終的に外部にどのような結果を示すのであれ、蓄積された経験は研究所にとって非常に貴重だと考えています。性暴力は少数の人々のみに発生した稀有な問題ではなく、いつでも、どこでも、誰にでも起こり得る一般的な問題です。令和4年の『男女共同参画白書』によれば、女性の14人に1人が性暴力を経験しています。将来、研究所が同様の問題に直面した場合に、今回の経験を活かし、より迅速で適切な対応ができることを希望しております。

しかし、この問題に関心を寄せいていただいた方たちの指摘のように、ご回答は「お役所言葉」を用い、極めて概括的な内容にとどまっており、私たちの質問に対する実質的な説明はなかったと感じています。

第一に、質問状で提起した4点の疑問に対し、直接的にも間接的にも回答しておらず、人々が最も関心を持っている滕彪の性暴力への告発についても触れていません。第二に、回答では「本学においても性被害を含むハラスメント全般に対する相談窓口やガイドラインなどがあることから、今後とも安全な環境づくりのために努力したいと思います」と記述しています。しかし、性暴力問題においては事前の予防が事後の対応よりもはるかに重要です。今後、学校の窓口やガイドラインをどのように活用して予防されるのか、具体的な努力の方向や取るべき対策については、何の説明もありません。このような曖昧で概括な表現は、この問題に関心を持つ人々に混乱や疑問を生じさせるかもしれないと考えます。

質問③:あなたたちは、なぜ性暴力事件に注目するのですか?また、なぜ明治大学国際労働研究所に公開質問状を送ったのですか?

回答:

以前の公開質問状で述べた理由以外にも、私たちは以下のように考えています。

性暴力事件の裏には、一連の構造的な暴力と不平等が密接につながっています。本件について、自分には関係なく、無視しようと考えたり、組織や機関の責任を追及せず、構造的な暴力を放置し、体系的な不平等を変革しない限り、同じような事件は永遠に繰り返されます。そして、わたしたちは怒りの中でますます絶望的になってしまうでしょう。

日本のジャニーズの性暴力事件を例にすると、ジャニー喜多川氏による性暴力問題ついては1960年代にも訴訟が提起されたことがあります。それ以降も異なる年代で複数の被害者が告発を行い、最高齢の被害者は70歳を超えています。2003年に東京地方裁判所がジャニーズの性暴力の事実を認定しましたが、この問題は依然として真剣に受け止められていません。ジャニーズ事務所は何の対応もせず、事務所の協力会社も自分と関係ないと考え、協力関係を続け、テレビ局やその他の主流メディアは沈黙を守り、一般公衆は「芸能界のゴシップ話に過ぎない」と考えがちです。被害者の声は無視されるか、逆に「売名行為」や「金目当て」だと誹謗中傷されました。社会的な無関心と無責任さが二次被害を深刻化させ、被害者はさらに孤立しました。これらは巨大な構造的暴力を示しています。

滕彪の問題も同様です。2016年の事件の発生後、心語さんは会議の主催者に問題を提起しましたが、取り上げられるどころか「面倒を引き起こした」と非難されました。複数の女性が組織・機関に告発したそうですが、「人道中国」が立場を表明したほかには、立場を表明した組織・機関は見られません。これらの女性の告発は真剣に受け止められたのでしょうか?関係する組織・機関は告発に対して、調査は行われたのでしょうか?いくつかの組織・機関の理事会が構成メンバーから滕彪を除外したことは知っていますが、それは性暴力/セクシャルハラスメントの告発と関係があるのでしょうか?その一方で、滕彪の役職や肩書きをそのままにしている機関もあります。これらの組織・機関は自ら立場を考えたことがあるのでしょうか?明治大学国際労働研究所のような組織が滕彪を招待した際、なぜ彼に対するMeTooの告発、特に彼のネットでの「謝罪」が不誠実だと指摘されていたことを検討しなかったのでしょうか。心語さんは2024年3月8日にSNSで研究所の責任者にメールを送ったと投稿しましたが、その後も返信はないようです。それどころか、ネット上では彼女に対する攻撃や中傷が行われ、さらに「被害者はスパイだ」という誹謗が性暴力の焦点をそらしています。これらの一連の出来事は、性暴力の構造性を裏付け、ジェンダーに基づく暴力の根深い問題を示し、すでに告発した被害者および未だ告発していない被害者に、現実の厳しさをより一層感じさせています。たとえその一連のできごとのどれか一つでも、その既存の構造を打ち破り、誠実に被害者に耳を傾け、真剣に対応することができれば、すでに負っている傷の痛みはそれ以上深まることはないのではないでしょうか。

質問④:ポストMeToo時代に、私たちはどのように行動すべきでしょうか?

回答:

組織や機関として、性暴力は一般的な問題であり、誰もが加害者や被害者になり得ることを認識することが必要です。性暴力の構造性に対する理解を深め、具体的な対策を立て、事前の予防に努めるべきだと思います。当事者双方に責任を丸投げしないように、被害者の訴えに真摯に耳を傾け、被害者の立場に立って理解し対応すべきです。そして事実の調査に全力を尽くし、できるだけ早く立場を明らかにすることが重要です。簡単に「調査や判断を行う能力がない」「無罪推定の立場に立つ」「司法の結果を待ってから判断や行動する」などと表明することは、実際には責任逃れであり、被害者をさらに傷つけることにしかならず、社会正義を実現することはできません。

個人として、被害者の声に耳を傾ける以外に、構造的暴力に対抗する一つのよい方法は、被害者の権利を擁護する活動や社会運動に参加し、組織することだと考えています。構造的な問題は個人の訴えだけでは解決できません。企業の従業員が権利を侵害されたときに労働組合に頼る必要があるように、組織に対しては組織的に立ち向かわなければ、構造的な問題は打破できません。

ここで言う組織には、既存の公益団体や機関だけでなく、特定の問題に対する関心を持っているネットコミュニティ・グループも含まれます。SNSのグループでの行動や活動も大いに影響力を持つかもしれません。

また、ここで言う社会運動には、デモ、抗議行動、ストライキなどの行動だけでなく、生活の様々な場面での積極的な関与も含まれています。例えば、MeToo事件に持続的に注目し、被害者の声に耳を傾け、グループ内で友人たちと議論し、オンラインやオフラインでの講座や討論会、オンラインでの連署活動などの行動も含まれています。個人の生活の中でも「静かな社会運動」を行うことができます。今後の社会運動においても皆さんと一緒に歩んでいけることを心から期待しています。

上記の4点の質問についての議論に参加したい方、また性暴力事件に対する典型的な対応例(良い例でも悪い例でも)について提起したい方は、ぜひ私たちにご連絡ください。性暴力の議題の投稿は随時受け付けています。メールアドレス:deonb6342@gmail.com またはInstagram/XでDMでも投稿を受け付けいます。

ポストMeToo時代における性暴力事件への対策と対応には、一律のアプローチや標準化された解決方法などはありません。議論そのものが行動であり、非常に意義があります。あなたの声がとても大切なのです!

2 thoughts on “在日フェミニスト、明治大学での騰彪氏による講演に抗議:公開質問状とその返答、現場写真、投稿 [日本語]

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